P2Pとはpeer-to-peerのことで、今までの特定のサーバが全てのサービスを提供してくれていた形と違って、(サービスに対する)クライアント同士が協力して、ひとつのサービスを実現します。2
このように仕組みの概要自体はそれほど難しいものではなく、言われれば簡単に想像することが出来るのですが、いざ実装するとなると難しい壁がいくつも立ちはだかってきます。
自分以外のクライアントをどうやって捜すか。
情報を誰に持たせるのか。
クライアントの中に悪意を持った人がいた場合どうするか。
どうやって全体の状況を把握するのか。
などなど、他にもいっぱい。
また、まだP2Pという言葉の定義も正確になされておらず、色々な分野で使われているので、偏にP2Pといっても、もの凄く広い分野がこれに含まれることになります。
今回の勉強会では、その広いP2Pの分野の中でも、様々な方面の話を聞くことが出来ました。
「分散ハッシュテーブル(DHT)入門とP2Pにおける認証について」 西谷 智広氏
DHTのことを中心に、P2P技術の概要のような話だったのですが、まだP2Pのことをあまりよく知らない僕にとっては、P2P勉強会導入にぴったりの話でした。
ただ、知らない単語もいくつか出てきたので、それについてはこれから復習です。
「アドホックネットワークの概要と技術動向」 阪田 史郎氏
もと大会社の研究員で、今は千葉大の大学院教授をされている方だそうです。
最近の動向の部分は、過去の動向を知らない僕には何がなんだかさっぱりでした。^^;
資料の方も、知らない略語ばっかりで既に日本語ではありませんでした。^^;;
けど、アドホックネットワークの概要の方は少しですけど理解することが出来、嬉しかったです。
友達がアドホックネットワークの研究開発をしているのですが、その世界の一端が見えた気がします。
「SIPの最新動向と技術課題 ~NAT/ファイアウォール越えを中心に~」 山田 育矢氏
初めSIPが何かが解らなかったのですが、パソコン用語辞典によるとセッションの開始や終了などを規定するプロトコルだそうです。
NAT越えの話は、現在P2Pのソフトを開発しようと思うと、必ずぶつかる問題だと思うので、興味深く聞かせていただきました。
しかし、フラクタリストという会社の方の講演なので、肝心な部分が企業秘密、ということが多くて残念でした。
企業の人の講演ですと、必ずそういう部分が出てきてしまうんですね。
「P2Pでマルチプレイヤ・ゲームを行うには: 理想と現実」 飯村 卓司氏
こちらは奈良先端科学技術大学院大学という大学院のみの大学で、まったりと研究をされている研究生の方だそうです。
今あるネットワークゲームは、サーバがサービスをやめてしまえばそれで終わり。ファミコンのゲームのように、久しぶりに出してきて昔を懐かしみながらプレイするといったことが出来なくなる恐れがあるというのが、問題提議で、それに対応するために、P2P形式を使って、サービスが終了してもユーザー同士が連携してゲームが出来る仕組みが作れないか、という話でした。
僕もネットワークゲームはいくつかやったことがあり3、自分で作ってみたいという思いも少なからずあるので、興味を持って聞かせて貰いました。
話を聞いて思ったのは、全ての仕事をクライアントに任せるPureP2Pではなく、大事な部分はサーバが担うHybridP2P方式にして、サービス終了後には、そのサーバの部分のプログラムを一般に開放すればいいのではないかということです。
昨日のブログにも書きましたが、今の時代個人でサーバを立ててる人は山ほどいます。友達の中にはネットゲームのサーバを立てている人もいます。サーバ部分を解放したら、そういう人達が喜んでサービスを開始するんじゃないかなって思うんです。勿論サーバ用ソフトを有料で配布するのでも構いません。
ただその時、サーバになるための敷居を低くするために、P2Pにしてサーバの不可を減らした設計にするといいと思います。
「グリッドとP2P」 首藤 一幸氏
産総研4の博士だそうです。一緒に行った友達のお父さんが働いてるのもそこだということで、今回唯一話しかけに言った人です。出来る人って感じの人でした。
グリッドというのは初耳でしたが、グリッドコンピューティングでしたら聞いたことがありました。
希少なスーパーコンピューターや観測機などのリソースをネットワークで結び、ある場所(例えばWeb上)から簡単に操作できるような環境を研究開発しているらしいです。
しかし、そのグリッドとP2Pとの結びつきの部分は時間の都合で講演して貰えず残念でした。
あと思ったのが、企業から来た人って言うのは、スライドの作りが上手い人が多いなっていうこと。
首藤さんのスライドもデザインが綺麗でした。
「井戸端会議スタイルがP2Pコミュニティを変える」 山本 浩之氏、望月 洋介氏、森本 雄氏
現在の掲示板では、話題のジャンルごとにスレッドが決まっていて、そこで別な話題を振ろうものなら、スレ違い、あっち行けと言われてしまい、自然な会話が出来ないのが問題とのことでした。
そうなるのは一部の掲示板だけのような気もしますが、掲示板が大規模になってくると必然的にそうなってきてしまうのかもしれません。
そこで彼らのアイディアは、話題ごとにグループを作り、話題が変化するとグループの分け方も変わってくるようなシステムでした。複数の話題に参加している時は、複数のグループにまたがることになります。
この仕組みを実現するのに、P2Pが適しているとのことでしたが、僕は既存のサーバクライアントのシステムでも十分作れると思いました。ただ、概念的には確かにP2Pに通じるところがあるので、P2P掲示板にこういう機能を付けてみるのもいいかもしれません。
どちらにせよ、今までにない形態の掲示板なので、是非実現して欲しいと思いました。
「新月の現状報告」 福冨 諭氏
恥ずかしながら、新月というのが何か知らなかったのですが、P2Pを利用した掲示板だそうです。
Winnyにあった掲示板のようなものでしょうか。後でDLして試してみようと思います。
福富氏は楽しい人でした。(*゚ー゚)フフフ
「P2P情報家電の試作と考察」 江守 拓実氏
情報家電をP2Pで結ぶ、といった試みの報告でした。
上司に言われて仕方なく、がむしゃらに頑張って作ったそうです。
時間の都合もあって、問題が山積みということしか伝わってきませんでしたが、これから期待される新しい分野だと思います。
「ファイル交換サービスと著作権問題」 福島 直央氏
主にNapsterやWinnyなどのファイル交換サービスの裁判の話でした。
Winnyの作者が逮捕されたことは、P2P学者全体にとっての恐怖であり、便利なサービスと思って開発するのにも、常に悪用→逮捕の恐怖が付きまといます。そんなこともあり、みんな凄い関心を示していました。
中でも面白かったのが、Winnyで著作物を違法に配布したとされる被告人の裁判で、被告人の家は光ファイバ回線を使っていて、これは電気通信ではないので、公衆電気通信法には引っかからないという弁護人の主張でした。
残念ながら、光も電磁波として電気通信の一種に含まれるということで、却下されてしまったそうですが。
著作権関係で逮捕されないためには、自分では交換される著作物を管理できない仕組みを作り出すことだというのが彼の主張でした。
「P2Pビジネスの将来を考える」 徳力 基彦氏
一時期は悪印象と逮捕の恐怖などで減っていたのですが、最近またP2Pを使ったビジネスが増えてきているそうです。
彼の会社でもP2Pを利用したコミュニケーションツールを開発していて、企業向けに販売しているそうです。
コンシューマー向けでないのは、まだ著作権周りの恐怖が拭いきれないからだそうですが。
そのコミュニケーションツールですが、とても面白そうだと思いました。
個人向けが無料であったら絶対使っていたのですが……
僕が作りたい、特定のサーバに依存しないメッセンジャーと似たところがあるので、興味深く聞かせて貰いました。
彼が言うには、著作権関係で逮捕されないためには、著作権業界と手を組むことが一番だそうです。
既にそれで成功している会社があり、著作物のネット配信をしているそうです。
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初めは難しくてついて行けるか不安でしたが、意外と理解することができました。
次回も是非参加したいなと思います。
こうして凄い人達の話を聞いていると、学生なんてたいしたことないなって思います。
学部生がたった1年間で研究する卒業研究なんて、夏休みの自由研究みたいなものなんじゃないでしょうか。
やっぱり、その分野を本気で学びたいと思ったら、その分野の第一人者の元で学び、下積みをしながら成長していくのが一番なんじゃないかなあ、と思うのですが……
飽きっぽくてめんどくさがりな僕は、今まで通り気ままに勉強していくのが一番いいのかなとも思います。^^;