修士論文

僕はもうすぐ修士課程を修了する予定なのですが、今日までにやってきた研究を簡単に紹介します。

僕は今年度一年で、「コミュニケーション相手に着目した異種コミュニケーションツール統合インタフェース1」と題しまして、コミュニケーションツールをひとつに統合するにはどうしたらいいかということを研究し、それを実現するためのアプリケーションを開発いたしました。

それが、ここで配布しているアプリケーションです。2
https://www.yuuan.net/lab/

まだまだ実用できるほど作り込んではいないのですが、一応コンセプトを見せられるくらいまでは作りました。
アプリケーションの使い方は、上記のサイトに簡単にですが書きましたので、ここでは研究として僕が考えてきたことを書こうと思います。


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PCを利用したコミュニケーションツールは数多く存在します。
電子メールやチャット、掲示板といったものから、最近では日記サイトを使ったコミュニケーションなんていうのも広く一般に行われるようになってきました。

利用できるツールの選択肢が増えることで、便利になる一方、面倒も増えました。
それは、ユーザが各種コミュニケーションツールを使いこなさなければならないということです。

例えば、各種コミュニケーションツールは、それぞれで別のアドレス(アカウント)を使用しています。
そのため、たくさんのコミュニケーションツールを使っている場合、電話番号・メールアドレス・メッセンジャーアカウント・ブログのアドレスなどなど、名刺にたくさんのアドレスを書かなければなりません。
逆に登録する側も、全部のアドレスをそれぞれのツール(アプリケーション)に登録していくのは面倒ですよね。

また、たくさんのコミュニケーションツールを使っていると、新着メッセージのチェックをそれぞれで行う必要があります。
電子メールでやりとりするメッセージに、mixiのメッセージ機能を使ったメッセージ、それからブログに書き込まれたコメントなど、自分が受け取ったメッセージを確認するために、わざわざいくつものツールを起動して確認しなければなりません。

他にも、メールアドレスだけ分かって電話番号を知らない友達がいたりだとか、コミュニケーションツールがたくさんあることによる問題は多々あると思います。
この問題点を少しでも解決しようというのが、僕の修士の研究でした。

解決策を考えるにあたり、まず、人がコミュニケーションを行う際に、何を重要視してるのかなということを考えました。
その答えは、「誰」と、どんな「内容」のコミュニケーションを行うかと言うことだと思います。
もちろん、「どこで」とか「どうやって」という要素もコミュニケーションには必要かもしれませんが、それは二の次だと僕は考えました。

しかし実際にPCでコミュニケーションを行う場合はどうでしょう。
まずコミュニケーションツールを選んで、そのツールを起動してから、メッセージを送信したり受信メッセージを確認したりしています。
これでは、「誰」や「内容」を意識する前に、ツールの違いに振り回されてしまいます。

そこで、2つの提案をしました。

ひとつは、統合的なインタフェースを用意することです。
新着メッセージの確認が、ひとつの画面で行えたら便利だと思いませんか?
各種コミュニケーションツールに共通した機能というのは結構あります。
例えば、受信メッセージや送信メッセージの一覧を見られる機能を持ったコミュニケーションツールは数多く存在するでしょう。
アドレス帳のような機能も、多くのコミュニケーションツールが持っていると思います。
これら共通する機能を、それぞれのツールで扱うのではなく、ひとつの統合的なインタフェースで扱えるようにすることで、なるべくツールの違いを意識せずにコミュニケーションが行えるようにしたいなと考えたのです。

もうひとつは、統一化した識別子を用意することです。
一部の匿名でのコミュニケーションを除き、ほとんどのコミュニケーションには相手が存在します。
そして、各種コミュニケーションツールごとに、相手を識別するための識別子が存在します。
例えば、電子メールアドレスや、メッセンジャーのアカウント、掲示板で使うハンドルネームなどです。
しかし、前に書いたように、一人でたくさんのコミュニケーションツールを使っていると、たくさんのアドレス(アカウント)を持つことになり、これらを全部管理するのはとても面倒です。
そこで、ユーザはただ一つの名前だけを意識して、アドレスの使い分けはコンピュータが勝手にやってくれれば良いと考えました。

以上2つの提案を実現するターゲットとして、今回はコミュニケーション履歴を選びました。
コミュニケーション履歴とは、過去に受け取ったメールや、メッセンジャーのメッセージ、それから友達が日記に書いた内容などのことです。

これらを見る際に、今までだったら、それぞれのコミュニケーションツールを起動して、その上で見ることになるのですが、今回開発したアプリケーションを使うと、このアプリケーションを起動するだけで、対応する全てのコミュニケーションツールの履歴を見ることができます。
もちろん、履歴を見る際に、各種コミュニケーションツールごとで用いられてる識別子(例えばメールアドレスやメッセンジャーのアカウント)を意識する必要はありません。
統一化した識別子で識別できるようになっているので、友達の名前を選ぶだけで、その人と行ったコミュニケーションの履歴を、利用したコミュニケーションツールに関わらず、一覧表示することができます。
履歴の中からあるキーワードを含むメッセージを検索することもできます。

ある人と行ったコミュニケーションの履歴が集まると、そこから色々なことを知ることができます。
例えば、その人とはどんな内容の会話を多く行っていたのかだとか、何時頃会話していたのかだとか。
この研究で開発したアプリケーションの特徴の一つに、この分析機能があります。
もちろん、各種コミュニケーションツールごとに履歴を分析したりすることは、これまでにたくさん行われてきていることなのですが、色んなツールで行われたコミュニケーション履歴を、一緒くたに分析するようなことは、まだほとんど行われていません。

分析を行うと、友達のことを知ることができます。
友達のことを知ることができるアプリケーション、それは友達事典とも言えるのではないでしょうか。
もともとはコミュニケーション履歴を閲覧することを目的に開発を始めたアプリケーションですが、最終的には、友達に関する情報を知ったり管理したりするための、友達事典のようなものにしていけたらと考えています。

  1. Development of Communicator-Centric Visual Interface Integrating Multiple Communication Tools
  2. プログラムの英題は仮名なのでその内変えます。

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